2025年 5 月13日

会社の福利厚生やチームビルディングの一環として計画される社員旅行やレクリエーション。
近年、社員旅行や社内イベントに対して「時代遅れ」や「こういったイベントがあるなら就職先の候補にしない」といった若い世代からのネガティブな意見が目立つようになりました。また、「これって労働時間/休日労働ですよね?」という疑問が投げかけられることがあり、労務管理のトラブルに発展する可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
このページでは、社員旅行や社内イベントが労働時間とみなされる条件や、労務管理の観点で考慮すべきポイントについて解説します。Q&Aでは、労働時間に関するよくある質問にお答えします。
社員旅行やレクリエーションが労働時間に該当するかどうかについて考える際、まず「労働時間とは何か」という基本的な概念を整理する必要があります。
労働基準法上の労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」とされています。(最高裁判所平成12年3月9日判決、三菱重工業長崎造船所事件)
以上のことから、労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下にある時間を指します。就業規則などで定められた時間以外でも、使用者からの明示的または黙示的な指示があった場合には、労働時間に該当する可能性があります。
したがって、就業規則で労働時間が定められているからといって、それ以外の時間が労働時間に該当しないとは限りません。
社員旅行やレクリエーションが労働時間に該当するか、単なる業務時間外のイベントなのかについては、以下の4点を基準に総合的に判断されます。
参加が任意かどうか
会社の費用負担がどうなっているか
事業運営上必要なものかどうか
事業主の命令によって行われているかどうか
これらの基準をもとに、「指揮命令下に置かれていたか」「指揮命令に基づくイベントなのか」を判断します。
例えば、社員旅行や運動会などのレクリエーションであっても、参加が強制されていたり欠席した社員が欠勤扱いとなる場合や、賞与の査定や昇給に影響する場合は、労働時間とみなされる可能性があります。
また、任意参加の行事であっても、運営の責任を担う従業員の場合は、使用者の指揮命令に基づく参加とみなされるため、労働時間に該当します。
旅行中の「会社行事」は注意が必要
任意の社員旅行であっても、ホテルの宿泊時に会社の全体会を行ったり、部門の課題を話し合わせるようなことを会社として強制すると指揮命令が発生してしまい、その部分について業務とみなされるため、注意が必要です。
行楽地に宿泊する場合でも、全員参加の合宿のようなミーティングや研修、経営会議を行うと労働時間にあたります。「どこに行くか?」ではなく「何をするか?」に注目して業務時間かどうかを考える必要があります。
Q1 始業前に制服への着替えが義務付けられています。これは労働時間に含まれますか?
制服を着用しての通勤が認められていない場合は着替えの時間も労働時間としてカウントされます。会社側が出社してから更衣室などでの着替えを求めているわけではなく、制服を着用しての通勤も認めている場合は、労働時間として認められない可能性が高いです。
Q2 終業時刻が18時です。18時5分の打刻に対して残業代を支払う必要はありますか?
労働時間とは、会社の指揮命令に従い、労働力を提供している時間を指します。
例えば、18時に業務が終了し、その後帰宅するための身支度を整えて18時5分に打刻した場合、この5分間は労働時間に該当しないため、残業代を支払う必要はありません。
労働時間や残業時間は「会社の指揮命令」があるかどうかで判断されます。そのため、残業を行う際には、会社の指示や許可が必要であることを従業員に周知しておくことが重要です。
Q3 終業後に研修を行っています。これは労働時間に含まれますか?
研修への参加が、業務上義務付けられていない自由参加のものである場合、その研修時間は労働時間に該当しません。研修への参加が労働時間に含まれるかどうかは、社員旅行などと同様に以下の点で判断されます。
参加が強制されているかどうか
参加しないことで不利益な扱いを受けるかどうか
休日に社外研修に参加し、レポートの提出などを求める場合は、労働時間に該当します。
Q4 出張のために、休日である日曜日に移動が必要です。この場合は労働時間になりますか?
出張の際の移動時間は、基本的には労働時間には該当しません。会社の指揮命令による移動と考えられる場合でも、新幹線での移動中に睡眠を取ったり、読書をしたり、スマートフォンで動画を見たりするなど、労働者が自由に使える時間として扱われます。
ただし、物品の運搬や監視、移動中にパソコンを使用した業務が指示されている場合など、具体的な業務が伴う場合には労働時間に該当します。
Q5 社用車を使って営業を行っています。直帰は認められておらず、帰宅前に必ず会社に戻らなければいけません。この場合の移動時間は労働時間になりますか?
直帰が認められていないことから、会社の指示に従って帰社しているものと考えられます。会社の指示に従った移動なので、労働時間に該当します。
「社員旅行やレクリエーションは労働時間に含まれるのか?」という疑問にお答えするため、
まずは「労働時間」とは何かという基本的な部分から解説しました。
労働時間の原則を理解することで、従業員からの「これって労働時間ですよね?」や「休日労働ですよね?」といった質問にも、
適切に対応できるようになります。
こうした問題でお困りの際には、労働法の専門家である社労士にご相談ください。
労働関係法令を根拠に、判断軸やトラブル時の対応方法をアドバイスします。
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