2025年 7月22日

かつて、働く時間は『9時~17時』が一般的でしたが、業務内容の多様化や働き方の変化に伴い、『時間』に対する価値観は変わりつつあります。 働き方改革では始業時刻と終業時刻を労働者が決めることができる“フレックスタイム制”が注目されていましたが、業務の繁閑に応じて労働時間を調整できる“変形労働時間制”を導入している企業もあります。
全3回にわたり変形労働時間制とフレックスタイム制を紹介します。今回は1か月単位の変形労働時間制を取り上げます。
労働基準法第32条は労働時間を1日8時間、1週間40時間以内と定めています。しかしながら変形労働時間制やフレックスタイム制は1日8時間、1週間40時間ではなく繁閑に応じて労働時間にメリハリをつけることができます。まずは3種類の変形労働時間制と1種類のフレックスタイム制の特徴を比較してみてみましょう。
| 制度 | 特徴 | 根拠条文 |
| ①1か月単位の変形労働時間制 | 1か月以内の一定期間を平均して、1週間の平均労働時間が40時間を超えない限り、特定の日や週は法定労働時間を超えて労働させることが可能 | 労働基準法第32条の2 |
| ②1年単位の変形労働時間制 | 1か月以上1年以内の一定期間を平均して、1週間の平均労働時間が40時間を超えない限り、特定の日や週は法定労働時間を超えて労働させることが可能 | 労働基準法第32条の4、同法32条の4の2 |
| ③1週間単位の変形労働時間制 | 1週間の合計労働時間が40時間以内の場合、特定の日は法定労働時間を超えて労働させることが可能 | 労働基準法第32条の5 |
| ④フレックスタイム制 | 清算期間内での1週間の平均労働時間が40時間以内になるよう総労働時間を定め、始業・終業時刻を労働者が決めることが可能 | 労働基準法第32条の3、労働基準法施行規則25の2③ |
使用者は労働時間が1か月以内の一定期間を平均して、1週間あたり40時間を超えない場合、特定の日や週は法定労働時間を超えて労働させることが可能です。但し、使用者は事前に変形期間中の各日・各週の労働時間(始業時刻と終業時刻)を特定し適用労働者に提示しなければなりません。
週平均労働時間=1か月の労働時間÷週数
(週数=対象期間の暦日数÷7日)例)一定期間を1か月とし、31日の場合
対象期間における法定労働時間の総枠=40時間×31日÷7日=177.1時間
週平均=177時間÷4.429週=39.96時間
(週数=31日÷7日=4.429週)
表の場合の場合は上限以内のため適法。
①1か月の労働時間合計は177時間(上限177.1時間)
②週平均は39.96時間(上限40時間)
| 週 | 労働時間(合計上限177.1時間) |
| 1週目 | 34時間 |
| 2週目 | 37時間 |
| 3週目 | 35時間 |
| 4週目 | 41時間 |
| 5週目(3日間) | 30時間 |
また、原則は週平均40時間ですが、特例事業では、使用者は週平均44時間まで労働させることができます。なお、特例事業とは常時10人未満の労働者を使用する商業・映画・演劇業・保健衛生業・接客娯楽業のことをいいます。(労働基準法第40条労働基準法施行規則25の2)
Q1 1か月単位の変形労働時間制で割増賃金の支払いが必要なのはどんな時ですか?
1か月単位の変形労働時間制で割り増し賃金の支払が必要な場合は下記のとおりです。
Q2 1か月単位の変形労働時間制で週平均40時間が超えてしまいました。割増賃金の支払いが必要ですか?
週平均40時間を超えた部分については労働基準法37条の割増賃金(時間外手当)の支払いが必要です。また、前提として法定労働時間以上労働させる場合には、36協定を締結する必要がある点にも留意しましょう。
Q3 1か月単位の変形労働時間制でもともと8時間勤務の予定の日に10時間働かせました。しかし計算したところ週の平均40時間は守られていました。割増賃金は支払わなくてよいですよね?
使用者は1週間平均40時間以内でも、あらかじめ1日の労働時間を8時間と定めていたにもかかわらず、1日の実労働時間が8時間以上の場合には割増賃金(残業代)の支払いが必要です。また、あらかじめ定めていた労働時間が8時間未満の場合には8時間を超えた部分について割増賃金の支払いが必要です。
Q4 1か月単位の変形労働時間で中途入社や退職がありました。賃金はどのように計算すればよいですか?
中途入社や退職があった場合には、変形労働時間制を適用せず原則にしたがって割増賃金等の計算をしましょう。
今回は変形労働時間制とフレックス制の比較と1か月単位の変形労働時間制の紹介をしました。
次回は1年単位の変形労働時間制と1週間単位の変形労働時間制をし紹介します。
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