2025年 8月12日

前回の記事では、1か月単位の変形労働時間制について紹介しました。
2回目の今回は「1年単位の変形労働時間制」と「1週間単位の変形労働時間制」について解説します。
1年単位の変形労働時間制では、労働日数や労働時間に厳格な上限が設けられています。一方、1週間単位の変形労働時間制は労働者に与える影響が大きいことから、導入できる企業に制限があります。
使用者は、1か月以上1年以内の一定期間を平均して、1週間の平均労働時間が40時間を超えない限り、特定の日や週は労働者を法定労働時間を超えて労働させることが可能です。
1か月以内の変形労働時間制と同様に、事前に変形期間中の各日・各週の労働時間(始業時刻と終業時刻)を特定し、適用労働者に提示することが必要です。
また、1年以内の変形労働時間制には、連続勤続日数等に上限が定められています。
なお、1か月単位の変形労働時間制とは異なり、特例事業においても、週平均労働時間は40時間以内となります。
| 月 | 月所定労働日数 (上限は280日) |
1日の所定労働時間 (上限は10時間) |
月所定労働時間 (上限は2085.17時間) |
|---|---|---|---|
| 1月 | 19日 | 7.5時間 | 142.5時間 |
| 2月 | 20日 | 7.5時間 | 150時間 |
| 3月 | 22日 | 8時間 | 176時間 |
| 4月 | 21日 | 9.5時間 | 199.5時間 |
| 5月 | 22日 | 9.5時間 | 209時間 |
| 6月 | 20日 | 9.5時間 | 190時間 |
| 7月 | 21日 | 8時間 | 168時間 |
| 8月 | 21日 | 7.5時間 | 157.5時間 |
| 9月 | 20日 | 7.5時間 | 150時間 |
| 10月 | 20日 | 7.5時間 | 150時間 |
| 11月 | 19日 | 7.5時間 | 142.5時間 |
| 12月 | 19日 | 7.5時間 | 142.5時間 |
| 年間合計 | 244日 | 1977.5時間 |
1週間の合計労働時間が40時間以内の場合、特定の日は法定労働時間を超えて労働させることが可能です。
しかしながら、導入できる会社は限られています。また、事前に1週間の各日の労働時間を労働者に通知しなければなりません。
なお、特例事業においても、1週間の合計労働時間は40時間以内となります。
Q1 1年単位の変形労働時間制と1週間単位の変形労働時間制を導入する場合、
どのような時に割増賃金の支払いが必要ですか?
1年単位の変形労働時間制の場合で、割増賃金の支払いが必要なのは、下記です。
1週間単位の変形労働時間制の場合も同様ですが、期間内の労働時間が1週間のため必然的に2段階のみとなります。
Q2 1年単位の変形労働時間制を採用しており、繁忙期に週平均40時間を超えていた週がありました。
しかし1年間(365日)の労働時間は2,000時間で法定時間内でした。割増賃金の支払いが必要ですか?
まずは、1日の予定していた所定労働時間を超えているか、その労働時間が8時間を越えているかを確認します。
1日の労働時間が、8時間以上で予定していた所定労働時間を超えた場合には、割増賃金の支払いが必要です。
次に1週間の予定していた所定労働時間を超えているか、その労働時間が40時間を越えているか確認します。
1週間の労働時間が、40時間以上で予定していた所定労働時間を超える場合には、割増賃金の支払いが必要です。
但し、1日の労働時間で割増賃金を支払った時間は除きます。
Q3 1年単位の変形労働時間制中に途中入社、退職者が出ました。割増賃金の支払いが必要ですか?
使用者は、対象期間より短い期間に1年単位の変形労働時間制の適用を受けた労働者には、実労働時間を平均して週40時間を超えた場合、超えた部分について割増賃金を支払う必要があります。
Q4 1週間単位の変形労働時間制を採用しています。いつまでに労働時間を定めればいいですか?
遅くともその週が始まるまでに、各労働者に書面で通知しましょう。
急な労働時間の変更は労働者の生活に与える影響が大きいため、使用者は労働者と日ごろからコミュニケーションを取りトラブルに発展しないよう、信頼関係を築くことも大切です。
今回は1年単位の変形労働時間制と1週間単位の2種類の変形労働時間制を紹介しました。
変形労働時間制はで会社の実態にあわせ、労働時間を柔軟に設定できる制度です。
変形労働時間制には割増賃金の発生を抑える効果が期待できますが、
使用者は「労働時間を柔軟に設定できる制度」
という本質を忘れないことが大切です。
最終回の次回はフレックスタイム制を紹介します。
労働関係法令を根拠に、判断軸やトラブル時の対応方法をアドバイスします。
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採 用
□ 採用選考時の留意点
□ 採用内定者フォロー
□ 労働条件の決定方法
□ 労働条件の明示内容
□ 雇用契約の締結
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配置・育成
□ 勤怠管理の方法
□ 管理職の指導問題
□ 配転など人事発令
□ 昇給・昇格・降格
□ 懲戒処分の方法と流れ
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退 職
□ 従業員からの退職希望
□ 会社からの退職の要請
□ 競業避止義務の有効性
□ トラブルにならない解雇
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企業内規定の整備
□ 就業規則・諸規定の整備
□ 規則等の法規制対応診断
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組織再編の支援
□ IPO準備のための労務監査
□ 人事制度・労働条件の統一
□ 労働条件不利益変更の解決
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労務監査
□ 労働関係法令違反の調査
□ 労務状況改善・定期監査
従業員の採用から退職まで、日々の人事労務管理上の悩みや問題点から、人材育成や評価、人員配置等の人事管理の方法や課題、起こってしまった労働トラブルの対応方法など、人に関わる事柄について多岐に渡り相談できるのが、「社労士の労働相談」です。
従業員の勤怠管理や給与計算、社会保険や安全衛生等、日々の労務管理業務に加えて、人材育成や評価、人員配置等の人事管理業務を行うにあたり、判断に迷う時、トラブルに繋がってしまった時、法的根拠を基にしたアドバイスができるのが、労働関係法令の専門家である社労士になります。
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「人・組織のコンサルティング会社」
社会保険労務士法人アイプラス
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