休憩時間

更新日アイコン2025年 11月11日 

休憩時間

 昼休み中に電話対応をした場合には、5分であっても休憩時間を延長する必要があるのでしょうか。休憩時間の原則を踏まえ、判例や行政解釈とともに解説します。

休憩時間の原則

 労働基準法34条1項では、「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければならない。」と定められています。

  • 休憩時間の定義
    休憩時間とは「労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間」であり、
    自由に利用できる時間であるとされています。
    そのため、下記の要件を満たさない場合、労働時間と判断されることがあります。
    ①労働からの解放の保証
    ②実作業からの解放
    ③場所的解放

  • 一斉付与の原則
    休憩時間は一斉に取得させるのが原則です。
    労働者が充実した休憩時間を過ごせるようにするため、監督機関が違反を発見しやすくするための原則とされています。(ジュリスト増刊・労働法の争点 104ページ)

  • 自由利用の原則
    休憩時間は労働者が自由行動できることが原則です。
    しかしながら使用者は、企業の土地・建物等に対する所有権・利用権、企業活動の円滑な遂行等使用者の権利や、他の労働者の休憩の権利を守るために規制を設けることができます。

目黒電報電話局事件
休憩時間中の事業内でのビラ配布などの政治活動・組合活動等が争われた目黒電報電話事件では自由利用にも限界があるとされました。

  • 手待ち時間
    手待ち時間とは「使用者の指示があった場合には、即時に業務に従事されることを求められており、
    労働から離れることが保証されていない時間」で労働時間として扱われます。

大星ビル管理事件
不活動の仮眠時間であっても、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられており、実作業から解放されていても労働からの解放が保証されているとは言えないため、労働時間に当たると判断されました。

すし処杉事件
すし店の板前見習および洗い場等裏方の仕事に従事している店員が、勤務時間中の客の途切れた時などを見計って適宜休憩してよいとされている時間は手待時間(労働時間)に当たると判断されました。

通達 昭23・4・7基収1196号 昭和63・3・14基発150号
昼食中の来客当番は労働時間であると判断されています。

実務上の対応

 休憩時間の電話対応については、実作業をしているため労働時間と判断されます。たとえ5分であっても労働基準法違反となる場合があるため、注意が必要です。

労働時間が8時間を超えるの場合
労働基準法では1時間の休憩時間を与えるよう定められています。電話対応により不足した5分間については、延長させるか、難しい場合には別途取得させるようにしましょう。

労働時間が6時間を超え8時間以内の場合
労働基準法違反にはなりませんが、心身の回復という意味では、申し出がある以上取得させた方がよいでしょう。
尚、就業規則で8時間を超えない労働であっても、休憩時間を1時間と定めているのであれば取得させる必要があります。

また、労働者に「休憩時間を取得できなかった」と言われないよう、日ごろから5分でも実務を行った場合には休憩をとるよう啓発することや追加の休憩時間の申請・取得をしやすい環境づくりも大切です。

こんな時どうする?

Q1 休憩時間にランニングをして汗だくで帰ってくる従業員がいます。行動制限はできますか?

業の土地・建物等に対する所有権・利用権、企業活動の円滑な遂行等使用者の権利、他の労働者の休憩の権利を守るために規制を設けることは可能ですが、スポーツは原則として心身回復のためOKとされています。
休憩時間の行動を制限するのではなく、不衛生な身なりであることは就業規則の服務規定違反となる等の指導を行いましょう。

Q2 休憩時間に遅れて戻ってくる従業員がいます。どのように対応すればよいですか?

業務の開始時点で、
・会社が指定した場所で、
・指定した業務に就労し労働力を提供する
ことが、労働契約の条件です。
まずは本人に注意をすることになります。厳格に対応するのであれば、遅れた時間については遅刻扱いとすることも可能です。

Q3 7時間勤務の予定だったので45分のみ休憩を与えていましたが、8時間を超える勤務となってしまいました。どうすればよいですか?

労働時間が6時間を超える場合には休憩時間は45分、8時間を超える場合には休憩時間は1時間与えなければなりませんので、追加で15分の休憩を与えましょう。

なお、延長により労働時間が8時間を超える場合、延長時間が何時間であっても、15分の休憩を追加して与えれば違法ではありません。
(昭22.11.27 基発第401号、昭26.10.13 基発第5058号)

労働者にとって休憩時間の確保は、非常に重要です。

日ごろから休憩時間のルールを周知し、労使ともに徹底しましょう。

5分くらいいいだろうの積み重ねが、離職や労働効率低下につながる恐れがあります。

不安や疑問がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。

 


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