2026年02月24日

企業が従業員に時間外労働や休日労働をさせる場合には、36協定の締結が必要です。
また、36協定には有効期間の定めが必要であることから、年に一度、年度末に36協定を締結し、届け出ている企業も多いのではないでしょうか。
今回は、36協定の基本と、近年、労働基準監督署からの指摘が増えている事項について解説します。
労働基準法第32条では、1日8時間・週40時間を超えて労働させることを禁止しています。また、同法第35条では、1週間に1日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないことが規定されています。
これらの規定の例外として、労働基準法第36条で定められているのが36協定です。これは、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と書面による協定を締結し、労働基準監督署へ届け出た場合に、協定の範囲内で労働時間の延長や休日労働をさせることが可能となるものです。
ここでいう「時間外労働」は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働のこと、「休日労働」は法定休日の労働を指します。
本来であれば、時間外労働は法違反となり罰則の対象となりますが、36協定を締結し、届け出ることで、罰則の対象としないという免罰効果が生じます。
36協定では、次の5つの事項を定める必要があります。
労働時間の延長または休日に労働させることができる労働者の範囲
36協定の締結によって無制限に時間外労働ができるようになるわけではなく、限度時間が設定されています。
時間外労働の上限は月45時間、年間360時間と定められています。そのため、時間外労働時間は上限を超えないよう管理する必要があります。
ただし、例外として臨時的な特別の事情がある場合には「特別条項」を設けることで、限度時間を超えた時間外・休日労働をさせることが可能です。
特別条項を設ける際には、時間外労働と休日労働の合計が1か月100時間未満、年間の時間外労働の合計が720時間以内、さらに2か月~6か月の時間外労働と休日労働の平均が80時間以内となるようにしなければなりません。
また、「臨時的な」「特別の事情」が必要であるため、特別条項を適用して月45時間を超える時間外労働が可能となるのは、年6回までという制限もあります。
特別条項における「月平均80時間以内」とは、2か月から6か月の間のいずれの期間を平均しても、時間外労働と休日労働の合計が80時間以内におさまっている必要があるという意味です。
例えば、時間外労働と休日労働が4月に80時間、5月に90時間あった場合、2か月間の平均が85時間となるため、この要件を満たしません。
36協定書の押印漏れ
36協定を締結する際には、協定書と協定届の双方を作成する場合と、協定届のみを作成して協定書を兼ねる場合があります。
労使協定を締結する際には、使用者・労働者代表双方の署名、もしくは記名・押印が必要となります。署名(手書きで氏名を記名)であれば押印の問題は発生しません。しかし、協定書をパソコンで作成し、使用者と労働者代表の氏名を記載する場合には「記名」となるため、押印が必要となります。
この署名、もしくは記名・押印という手続きが漏れていることで、実際には有効な36協定が締結されていないということが起こり得ます。また、協定届を提出する際には押印は不要ですが、協定書を兼ねる場合は協定届にも記名押印が必要となるため、押印漏れには注意が必要です。
過半数代表者の「職名」記入漏れ
36協定の届出書には、労働者代表の職名と氏名を記載する欄があります。管理監督者は過半数代表になることができないため、役職を持たない従業員が代表者となることも少なくありません。
そのため、「職名」を空欄のまま提出すると、適正な人物が代表者になっているか判別できないとして、再提出を求められる場合があります。役職がない場合でも「一般社員」や「営業社員」と記載する必要があります。
特別条項の適用理由
限度時間を超えて労働させることができる場合を定める際には、通常予見することのできない業務量の大幅な増加などに伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合を、できる限り具体的に定めなければなりません。
例えば、決算業務や大規模なクレームへの対応、機械トラブルへの対応などは認められる可能性がありますが、「業務上やむを得ないとき」といった抽象的な理由や、通常の36協定届と同様の内容を記載して提出すると、再提出を求められる可能性が高くなります。
Q1.労働者の過半数代表はどのように選出しますか?
正社員だけでなく、パートやアルバイトなど、事業場の全ての労働者の過半数を代表している必要があります。
36協定を締結するための過半数代表を選出することを明らかにしたうえで、投票や挙手などによって選出する必要があります。使用者が指名した場合や、社員親睦会の幹事などを自動的に選任した場合には、36協定を締結するために選出されたわけではないため、36協定は無効となります。
また、労働基準法第41条第2項に規定する管理監督者は、労働者の過半数代表とはなれないため、注意が必要です。
他の事項が法律に則って定められた協定を届け出たとしても、代表者の選出方法に不備があると有効な協定とはなりません。36協定が無効=違法な時間外労働となります。
Q2.36協定を届け出ればそれで問題ない?
36協定を締結し、届け出た場合、労働者への周知が必要となります。
就業規則の周知義務と同様に、36協定についても周知義務が課されています。
36協定の周知方法としては、就業規則と同様に、事業場への掲示、書面の備え付け、書面の交付、または電子媒体による提供といった方法が認められています。従業員がいつでも内容を確認できる状態にしておくことが重要です。
また、労働基準監督署の調査においても、36協定の周知が適切に行われているかは確認ポイントになります。
Q3.限度時間を超えてしまったら?
36協定は、協定で定めた時間内であれば時間外労働をさせても罰則の対象とならないというものです。
そのため、上限時間や特別条項の限度時間を超えた場合には、労働基準法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される可能性があります。
ただし、上限を超えたからといって、すぐに罰則の対象となるわけではありません。労働基準監督署の是正指導が入った場合に、指導に従わず改善されない、あるいは上限時間を超える時間外労働が常態化しているなど、悪質な場合に罰則が科され、社名が公表されるケースがあります。
直ちに罰則の対象になるわけではないとはいえ、上限時間や労働時間の管理が重要となります。また、会社側が労働時間を管理するだけでなく、従業員にも労働時間の管理や適切な把握を行うために必要な事項を教育するなどの対策が必要です。
今回は36協定の基本について解説しました。
年度末には36協定の届出を行う企業が多いため、処理に時間がかかる場合があります。
書類に不備があった際に修正することも考慮し、余裕を持った届出を行うことが重要です。
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