健康診断実施後の対応

更新日アイコン2026年03月24日

健康診断後の対応

会社の規模にかかわらず、常時使用する労働者に対しては、定期健康診断の実施が義務付けられています。
現在では「定期健康診断を実施していない」という企業は減少していますが、健康診断結果の保存方法や、異常所見があった場合の対応についてのご相談は依然として多くあります。

特に、産業医の選任が義務付けられていない従業員50人未満の事業場では、「そもそも誰に相談すればよいのかわからない」という声も少なくありません。

今回は、定期健康診断の基本事項と、実施後に必要となる措置について解説します。

定期健康診断の基本

労働安全衛生法第66条では、事業者は労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならないと定めています。

健康診断には、一般健康診断、特殊健康診断、臨時健康診断の3種類がありますが、今回は一般健康診断の中でも対象者が最も多い定期健康診断について解説します。

定期健康診断は、労働安全衛生規則第44条によって規定されている健康診断です。この条文により、事業者は①常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)に対し、②1年以内ごとに1回、③定期に医師による健康診断を行わなければいけないとされており、事業主には健康診断の実施義務が課されています。

①常時使用する労働者とは

健康診断を受診させる義務のある「常時使用する労働者」とは、いわゆる正社員に限りません。短時間労働者や有期雇用労働者であっても、以下の条件をいずれも満たす場合は「常時使用する労働者」とされます。

  1. 無期雇用労働者であること。
    有期雇用労働者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、または更新により1年以上使用されている者。
  2. その者の1週間の所定労働時間が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

なお、上記2の基準(所定労働時間が4分の3以上)に満たない場合でも、1の条件に該当し、かつ所定労働時間が通常の労働者の2分の1以上である場合には、健康診断を実施することが望ましいとされています。

②1年以内ごとに1回とは

健康診断の実施のタイミングは「1年以内ごとに1回」とされています。法律条文特有の紛らわしい表現ですが、これは年に1回実施することを意味します。

ここでいう「1年以内ごと」というのは、労働者個人を基準に判断します。
そのため、前年の健康診断を6月に受診した従業員の場合、「今年も6月までを目安に、健康診断を受診してください」と案内するイメージを持つと分かりやすいでしょう。

また、常時使用する労働者を雇い入れる際には、雇い入れ時の健康診断の実施が義務付けられています。雇い入れ時の健康診断の実施タイミングは法令上明確に定められているわけではありませんが、入社前後で実施することが妥当と考えられています。なお、雇い入れ時の健康診断は、従業員が入社前3か月以内に健康診断を受診していて、かつ、その結果を提出した場合には省略することが可能です。

雇い入れ時健康診断を受けた者については、実施の日から1年間は定期健康診断を省略できます。
したがって、「1年以内ごとに1回」は、雇い入れ時の健康診断を実施した日や直前の健康診断を受診した日を起算日として1年以内と考えることになります。

③定期に医師による健康診断とは

ここでいう「定期に医師による健康診断」とは、労働者の健康状態を継続的に把握するために、毎年1回、医師が行う健康診断を実施することを指します。

「定期に」という表現は法律条文特有の言い回しであり、「1年以内ごとに1回」と組み合わせて使われることで、年1回の健康診断を継続して行う義務があることを示しています。したがって、事業者は毎年、医師による健康診断を確実に実施し、労働者の健康状態を継続的に把握する必要があります。

健康診断実施後の対応

健康診断の実施後は、労働者に対して、遅滞なく健康診断の結果を通知しなければなりません。

また、企業には健康診断結果を記録しておく義務があり、健康診断個人票を作成し、5年間保存する必要があります。
健康診断個人票は労働安全衛生規則第51条において様式が示されていますが、この様式に記載されている項目が含まれていれば、形式は問わないものとされています。

なお、健康診断個人票の保存は5年間とされていますが、これは従業員が退職した場合でも即時に廃棄できるものではないため、注意が必要です。

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断を行った場合、遅滞なく電子情報処理組織を使用して、所定の事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない旨も定められています。この場合の労働者数は、企業全体ではなく、事業場単位で50人以上という意味です。

異常所見があると診断された場合

健康診断の結果、異常の所見があると診断された場合、事業主は当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師等の意見を聞かなければなりません。

この意見聴取は、一般健康診断の場合、健康診断が行われた日から3か月以内に行うこととされています。

医師等への意見聴取では、就業制限や休業の必要性についての意見を聴取する必要があります。

事業主は、医師の意見を勘案したうえで、当該従業員の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、勤務時間の短縮などの措置を講じる必要があります。

なお、医師等の意見は、健康診断個人票に記載して保存します。

医師等の意見聴取とは

医師の意見聴取は、産業医を選任している事業場では産業医が担当し、産業医の選任義務がない事業場では、地域産業保健センターの相談窓口などを活用して実施します。

なお、産業医の選任義務のない小規模な事業場であっても、異常所見がある場合には医師の意見聴取は必要であるため、注意が必要です。

健康診断実施後の流れ

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こんなときどうする?

Q1.健康診断にかかる費用の負担や、健康診断受診時の賃金について教えてください。

健康診断の実施は法律で義務付けられているため、費用に関しては事業者が負担するものとされています。

一般健康診断の場合、賃金については「支払うことが望ましい」とされていますが、賃金の支払いが義務となっているわけではありません。
受診率向上のために、業務時間内に健康診断を受診させ、その時間について賃金控除を行わないとしている企業も多くあります。

また、「休日に健康診断を受診した場合はどうなるのか?」というご質問もよくありますが、受診時の賃金の扱いについては会社が独自にルールを定めて構いません。そのため、就業規則などに会社としてのルールを明記しておくことが重要です。

Q2.医師の意見聴取が必要な「異常の所見」とは、どの程度のものを指すのでしょうか?

法律条文上は、「異常の所見がある従業員について医師の意見聴取を行うこと」を義務付けているのみで、具体的にどのような項目が「異常の所見」に該当するかは示されていません。そのため、実務では判断に迷う場面も多くあります。

健康診断の結果は、「異常なし」「要経過観察」「要再検査」「要精密検査」「要治療」などの判定が一般的です。

厳密には「異常なし」以外は「異常の所見」に該当すると考えられますが、実際の運用では「要再検査」以上の判定が出た場合に医師の意見聴取を行うことが多いようです。

Q3.「要精密検査」の結果が出た場合、従業員に必ず精密検査を受診させています。この場合でも医師の意見聴取は必要ですか?

健康診断の結果に基づく再検査や精密検査と、医師の意見聴取は分けて考える必要があります。
医師の意見聴取は、就業上の措置について意見を聴くものなので、再検査や精密検査の受診の有無に関わらず実施する必要があります。


今回は、健康診断の基本と実施後に必要となる措置について解説しました。

近年では、異常所見があったにも関わらず医師の意見聴取を行っていない点を、
労働基準監督署から指摘されるケースも増えているようです。

また、法改正により50人以上の従業員を使用する事業主は、健康診断の結果報告を
電子情報処理組織を使用して行うことされています。この点についても注意が必要です。

判断に迷う際には、労働法の専門家である社労士にご相談ください。


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