2026年04月28日

正社員・契約社員・アルバイト・パートなど、従業員の呼称は企業によってそれぞれ異なります。
一般的には、正社員は無期雇用でフルタイム勤務、契約社員は有期雇用でフルタイム勤務、アルバイトやパートは有期雇用の短時間勤務としている企業が多いのではないでしょうか。
こうした呼び分けがされる中で、「正社員にさえしなければ、簡単に辞めさせることができる」といった誤解から、トラブルに発展する事例が多く見受けられます。
そこで本記事では、有期労働契約の原則と、いわゆる「雇止め」について解説します。
正社員や契約社員といった呼称は、法律で定められたものではありません。法的には雇用期間の定めの有無によって「無期雇用労働者」と「有期雇用労働者」に分類されます。
有期労働契約の締結
有期労働契約は、文字どおり、契約期間(1年や6か月など)を定めて締結する労働契約です。
原則として契約の上限は3年とされており、専門的知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者との契約の場合は上限が5年、有期事業の完了までの期間を定める場合は、その期間と定められています。
有期労働契約締結時に明示すべき事項
有期労働契約の締結時には、通常の労働条件に加え、労働契約を更新する場合の基準に関する事項も明示しなければなりません。
通算契約期間や更新回数に上限の定めがある場合には、それらの上限についても明示することとされています。
有期労働契約の解約
有期労働契約を締結した場合、原則として契約期間中は、労働者・使用者ともに契約を解除することはできません。
労使いずれの場合も、「やむを得ない事由」がある場合に限り、例外的に契約の解除が可能とされています。
ただし、1年を超えて3年の範囲内で契約を締結した場合は、専門的知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者を除き、労働契約の初日から1年を経過した日以降は、使用者に申し出ることによって、いつでも退職することが可能とされています。
有期労働契約の終了
有期労働契約は、あらかじめ定めた契約期間が満了することによって終了するのが原則です。
しかし、実際には契約更新を繰り返しながら雇用が継続されているケースも多く、単に「契約満了で退職」とは言い切れない場合があります。
無期転換ルール
有期労働契約が更新され、通算5年を超えた場合は、労働者の申込によって無期労働契約に転換することが可能です。無期転換の申込があった場合、使用者はこれを拒否することができません。
「正社員にさえしなければ、簡単に辞めさせることができる」という誤解の背景には、「解雇」と「雇止め」の混同があります。次に、この二つの違いを確認していきます。
解雇とは
契約期間の定めの有無にかかわらず、使用者からの申出による一方的な労働契約の終了を「解雇」といいます。
しかし、解雇は、使用者がいつでも自由に行えるものではなく、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。
たとえば、従業員の勤務態度に問題がある場合や、業務命令・服務規律に違反するなどの場合が考えられますが、そのような場合であっても、指導の内容や会社が被った損害の重大性など、さまざまな事情が考慮されます。
また、解雇の対象となる行為については、就業規則に記載しておかなければなりません。
「気に入らないから辞めさせる」といった理由による解雇は、当然ながら認められません。
さらに、合理的な理由がある場合であっても、解雇を行う際には少なくとも30日前に予告するか、30日以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
なお、有期労働契約の場合は「やむを得ない事由」が必要とされており、無期労働契約の場合と比べて、解雇の有効性はより厳しく判断されます。
雇止めとは
「雇止め」は、解雇とは異なり、有期労働契約を更新せずに契約を終了させることをいいます。有期労働契約を更新しない場合に「雇止め」となるため、無期労働契約において「雇止め」が行われることはありません。
通常、有期労働契約は契約期間の満了によって終了します。
しかし、あらかじめ契約を更新しない旨を明示している場合を除き、
①契約が3回以上更新されている場合
②契約が更新され、最初に有期労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
③1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
には、契約を更新しない旨を伝える「雇止めの予告」が必要となります。
さらに、有期労働契約を反復して更新しており、実態として期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、従業員が雇用の継続を期待することについて合理性があると考えられる場合には、雇止めが無効となることがあります。
有期労働契約の場合には、原則として契約期間満了までは解約ができず、従業員の能力不足などを理由として「解雇」することも、よほどの事情がない限りは難しいものと考えらえます。
そのため、契約満了のタイミングで「雇止め」を行うという運用となります。もっとも、雇止めを行う際にも一定の制限があります。
雇止めの手続きとして法律上求められているのは、
①契約期間が満了する日の30日前までに予告をすること
②労働者から請求があった場合には、契約を更新しなかった理由についての証明書を交付すること
の2点です。
その他に必要な手続きは特に定められておらず、法律条文のみを読み解くと、口頭での通知でも問題はないことになります。しかし、後のトラブルを防ぐ観点から「雇止め通知書」を交付するのが一般的です。
雇止め通知書には、契約更新の年月日や雇止めの理由、退職手続きに関する事項などを記載します。
法律で定められた書類ではないため、「契約は○月○日で終了し、更新しません。」といった記載でも問題はありません。
ただし、これまで契約更新の際に、更新の条件に適合しているかどうかの判断を行っていなかった場合や、労働者に対して「次回も契約が更新されるだろう」と期待させるような言動があった場合には、雇止めが無効となる可能性もあります。
そのため、有期労働契約を締結している従業員であっても、定期的に面談を行い、期待する水準の業務ができていない場合には指導を行うとともに、その内容を記録として残すといった手続きを踏むことが望ましいと考えられます。
Q1. 1年間の有期雇用で採用した従業員が、ぱっとしません。辞めさせることはできますか?
有期雇用契約を締結した場合、原則として契約期間満了までは解雇することはできません。
従業員が懲戒処分に相当するような重大な問題行為を行った場合には、「やむを得ない事由」があるとして解雇が認められる可能性もありますが、「ぱっとしない」といった理由のみで、契約期間の途中で「辞めさせる」ことは難しいものと考えられます。
そのため、合意のうえで退職していただく、もしくは日々の指導を積み重ねたうえで、次回の更新は行わないという対応を取るのが現実的な運用といえるでしょう。
また、トラブルを防ぐためにも、労働条件通知書の更新の有無については「自動更新」としないことが重要です。
Q2. 有期雇用の従業員を雇止めします。その場合、離職理由は会社都合となるのでしょうか?
有期労働契約の期間満了により雇止めを行う場合、原則として当初の契約通りに契約が終了したものと解されるため、離職理由は「会社都合」には該当しません。
ただし、
①通算契約期間が3年以上、かつ契約更新回数が1回以上である場合
②労働者から契約の更新または延長を希望していたにもかかわらず、契約の更新または延長が行われなかった場合
(労働者本人の更新希望の確認をしなかった場合も含みます)
のいずれも満たす場合には、ハローワークにおいて、離職票の離職区分コードが「1A(解雇等)」と判断される可能性があります。
この場合、助成金の受給に影響が出る可能性があるため、注意が必要です。
今回は、有期労働契約の原則と「雇止め」について解説しました。
「正社員にさえしなければ、簡単に辞めさせることができる」という考え方は、大きな誤解です。
有期労働契約を締結している場合には、期間の定めのない労働契約と比べて、保護の必要性が高いとされており、
さまざまな制限が課されることとなります。
有期労働契約締結時の労働条件通知書への記載や、更新時の判断、交付すべき書類などについて、改めて確認することをお勧めします。
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