飲みにケーションを指導したい

更新日アイコン2026年05月12日

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飲みにケーションの多い部署では、飲みすぎによる遅刻が繰り返されることがあります。
しかも、それを黙認する上司がいる場合、職場全体の規律や労務管理にも影響が及びかねません。
もっとも、飲み会は業務時間外に行われることが多いため、
「私的な時間のことまで会社は指導できるのか」と悩む場面もあるでしょう。
では、こうしたケースは本当に指導できないのでしょうか。 

業務時間外の行動を指導できるか?

業務時間中に従業員が問題行動をした場合には指導ができるが、業務時間外の従業員の問題行動については指導ができないのでは?と思われる方も多いのではないでしょうか。まずは、そもそもなぜ業務時間中の問題行動に対して指導ができるのかに立ち返って考えてみましょう。

  • 働くとは?
    従業員が会社で働くというのは、会社と従業員で労働契約を締結するということです。
    契約には義務と権利が伴い、従業員は会社へ誠実に労働力を提供する義務を負い、会社から労働力の対価として賃金の支払いを受ける権利を持っています。一方で、会社は従業員へ労働力の対価として賃金を支払う義務を負い、従業員から誠実に労働力を提供を受ける権利を持っています。

  • 指導の根拠
    ここでいう、誠実な労働力や労働力の対価とはどの程度のものを指すか会社と従業員の間で認識のズレが生じる可能性があります。そのため、労働条件通知書や雇用契約書、就業規則などでその内容あらかじめ定めておくことになります。
    当然、双方はこれらの定めを守る義務があるため、会社は従業員が契約に反した行動をした場合には指導する権利があり、従業員も会社が契約に反した賃金の支払いをした場合には是正を求める権利があります。
     したがって、労働条件通知書や雇用契約書、就業規則に定めのある行動については指導の対象となり得ますが、定めのない行動については、契約上制限されていない以上、指導が難しい場合があります。ただし、就業規則等に規定があれば、どのような行動でも指導できるというわけではありません。従業員の最低限の権利を守るために、労働基準法などによって一定の制限が設けられています。

  •  業務時間外の問題行動は指導できない ?
    「業務時間外の問題行動は指導できない」という考え方は、業務時間外の行動が契約の範囲を超えるため、原則として会社の指導権が及びにくいという意味で整理できます。しかし、業務時間外の行動であっても、会社に損害を与えたり、業務時間内の勤務に影響を及ぼしたりすることがあります。そのため、判例上は、業務時間外の行動であっても、社会通念上相当な範囲であれば指導が認められる場合があるとされています。
     
  • 就業規則等に基づいて指導するとは?
     就業規則に「飲み会を禁止する」といった内容を明記している企業は、実際にはそれほど多くないでしょう。そのため、就業規則に直接書かれていない事項について指導を行う場合には、行為そのものを抽象的に問題視するのではなく、就業規則や業務に関係する具体的な支障に着目することが大切です 。 
     たとえば、飲み会への参加自体を問題にするのではなく、その結果として遅刻や欠勤が生じている、勤務中の態度や服務規律に違反している、あるいは適切な労務管理に支障が出ているといった点を確認し、それらを根拠として指導していくことになります。

  • 就業規則等に明記されていない問題行動は指導できない?
    就業規則を読み解く際には、条文だけを見るのではなく、その背景にある経営理念や会社が求める従業員像も踏まえることが重要です。明示的な禁止規定がない場合でも、経営理念に照らして、その行動が会社の目指す姿や職場にふさわしい振る舞いに反していないかという観点から、問題行動かどうかを判断することがあります。 
     たとえば、髪色について具体的な指定がない場合であっても、伝統や文化を重んじることを経営理念に掲げる飲食店であれば、派手な縞模様の髪色は店舗の雰囲気や接客方針にそぐわないと判断されることがあるでしょう。
     一方で、伝統と最先端の流行の融合を経営理念としている飲食店であれば、同じ髪色であっても直ちに問題とはされず、むしろ店舗の個性に合うと受け止められる可能性もあります。 

    このように、同じ行動であっても、会社の理念や業態、顧客に提供する価値によって評価が異なることがあります。そのため、指導にあたっては、本人の私的な行動そのものを過度に制限するのではなく、会社としてどの部分に業務上の支障があるのか、またその行動が就業規則上のルールや経営理念とどのように関係するのかを示すことが重要です。 

飲みにケーションのリスクと就業規則

 飲みにケーションにはさまざまなリスクがあります。一般的に考えられるリスクとともに、就業規則上どのような問題として整理し得るのかを確認していきましょう 

  •  情報管理上の問題
    飲み会の場で会社の内部情報や取引先に関する話題を不用意に口にする行為は、一般的には秘密保持義務情報管理に関する規定との関係で問題となり得ます。また、その場での発言が会社や関係者の信用を損なうような内容であれば、信用失墜行為の禁止服務規律に反する行為として位置づけられることもあります。さらに、会社貸与物や業務に関係する資料等を紛失した場合には、会社貸与物の管理義務誠実義務に反するものとして整理されることが多いでしょう。 

  •  労務管理・業務運営上の問題
    飲み会の場で重要事項が決まってしまい、参加していない従業員に情報が共有されないような状態は、直ちに就業規則違反と明記されていない場合でも、職務専念義務誠実義務職場秩序の維持といった観点から問題視されることがあります。また、飲み会への参加が事実上業務遂行の条件のようになっている場合には、運用次第で服務規律公正な業務運営の観点から不適切と評価されることもあります。加えて、飲酒の影響による遅刻や欠勤は、一般的な出退勤管理に関する規定遅刻・欠勤に関する服務規律に抵触し得る行為といえます 

  •  安全配慮・健康上の問題
    過度の飲酒それ自体が直ちに就業規則違反になるとは限りませんが、その結果として翌日の勤務に支障が出る場合には、誠実に労務を提供する義務心身の状態を整えて就業することを求める服務規律との関係で問題となることがあります。また、会社が健康管理や安全衛生に関する協力を求めている場合には、継続的な不調や無理な飲酒が安全衛生に関する協力義務との関係で論点になることもあります。飲み会帰りの事故やけがについても、状況によっては就業への支障という形で、会社の労務管理上無関係ではいられない問題となります。 

  •  ハラスメント・人間関係上の問題
    飲酒の強要は、一般的な就業規則に置かれているハラスメント禁止規定職場秩序維持義務に反する行為として整理しやすい類型です。また、業務時間外であっても、参加を執拗に求めたり、断りにくい圧力をかけたりする行為は、状況によってパワーハラスメントに該当し得ます。さらに、酒席での暴言、威圧的言動、暴力行為などは、服務規律違反職場秩序を乱す行為、場合によっては信用失墜行為として位置づけられることが多いでしょう。 

このように、飲みにケーションに関する問題は、就業規則に「飲み会禁止」と明記されていなくても、一般的な就業規則に置かれている秘密保持、服務規律、誠実義務、職場秩序の維持、遅刻欠勤、ハラスメント防止、安全衛生といった規定に引きつけて整理することが可能です。実際の指導にあたっては、飲み会そのものを問題視するのではなく、どの行為が、どの就業規則上の義務や規律に関わるのかを具体的に示すことが重要になります。 

そもそも、会社外でしか十分なコミュニケーションが取れない状態は、健全な職場環境とはいいにくい面があります。大切なのは、飲み会そのものを一律に問題視することではなく、なぜそのようなコミュニケーションに依存する状況が生まれているのかを把握し、職場内で円滑に意思疎通できる環境づくりにつなげていくことです。 

こんなときどうする?

Q1. 飲みにケーション対策で管理職には日ごろからよくコミュニケーションを取るよう伝えていますが、なかなかうまくいきません。何かよい方法はありませんか?

まずは、飲み会に頼らず、職場の中で日常的にコミュニケーションが取れる環境を整えることが重要です。その方法の一つが、1on1を定期的に行うことです。定期的に話す場があれば、業務に関する相談だけでなく、ちょっとした雑談もしやすくなり、結果として業務上の疑問や不安も早めに共有しやすくなります。
こうした積み重ねが、職場全体の「聞きやすさ」や「話しやすさ」につながります。 

Q2.  管理職世代から「若手世代とは世代間ギャップがあるから話しにくい」と言われました。世代間ギャップを埋める方法はありませんか?

世代間ギャップは、無理に埋めようとするのではなく、むしろ会話のきっかけとして捉えることが有効です。
若手社員との間にギャップがあると話しかけにくさを感じることもありますが、その違いを前向きに話題にすることで、自然なコミュニケーションにつながることがあります。
たとえば、流行や価値観の違いを無理に合わせようとするのではなく、「自分たちの世代とはこう違うのだな」と関心を持って話すことで、相手への理解を深めるきっかけになります。 


 今回は、飲みにケーションに関する指導の考え方と対策について解説しました。
飲みにケーションへの対応として、飲み会を原則控える文化を打ち出している企業もありますが、
大切なのは、単に禁止することではなく、
その方針がどのような経営理念や職場文化に基づいているのかを明確にすることです。
たとえば、「自己研鑽第一」といった価値観を重視するのであれば、
その考え方に沿ったコミュニケーションのあり方を社内で共有していく必要があります。

アイプラスでは、労務管理に関するご相談はもちろん、
経営理念や組織文化の醸成などのテーマもご相談いただけます。 


社労士の労働相談

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