2026年05月26日

育児・介護休業法は、育児や介護を理由に離職することなく、仕事と家庭生活を両立しながら働き続けられる社会の実現を目的としています。
こうした考え方のもと、国は企業に対して、育児期の従業員への支援体制の整備を求めています。
今回は、最近ご相談が増えている短時間勤務制度について解説します。
短時間勤務制度とは、育児・介護休業法第23条第1項に規定されている「育児のための所定労働時間の短縮措置」を指します。
同法では、3歳に満たない子を養育する労働者から申出があった場合、育児のための所定労働時間の短縮の措置を講じなければならないと規定しています。
また、この短縮措置は、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含めなければならないとされています。
3歳に満たない子を養育する労働者のうち、以下の3つの要件を満たす場合に、短時間勤務制度を利用することができます。
日々雇用される者でないこと
労使協定を締結している場合には、以下の労働者は対象外とすることができます。
ただし、「業務の特性に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者 」については、短時間勤務制度の代替措置を設ける必要があります。
2歳未満の子を養育する雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす場合には、短時間勤務中の賃金の10%(給付と賃金の合計が短時間勤務開始前の賃金を超えないよう給付率が調整されます)相当額の育児時短就業給付金が支給されます。
育児短時間勤務制度は、対象労働者からの申出があった場合、会社はこれを拒むことができません。
実務上は、従業員から申請書を提出してもらい、会社が「育児短時間勤務取扱通知書」を交付する流れが一般的です。
育児短時間勤務取扱通知書については、決まった書式はありませんが、厚生労働省からモデル様式が公表されています。
取扱通知書には、短時間勤務の期間や、短時間勤務期間の取り扱い等を記載します。
これまでの契約内容を引き継いだまま、所定労働時間についてのみ、期間限定で一時的に契約を変更するイメージとなります。
短時間勤務については、育児・介護休業法によって定められていますが、その間の賃金の計算方法については、法律で定められているわけではありません。
そのため、短時間勤務中の賃金の控除方法については、企業ごとに定めることが可能です。
ただし、短時間勤務を利用することによる不利益な取扱いは禁止されているため、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、不就労分の賃金を控除することは可能ですが、それ以上の控除は不利益な取り扱いとみなされます。
たとえば本来の所定労働時間が8時間である従業員が、育児時短勤務制度を利用して所定労働時間を6時間に短縮する場合には、短縮した2時間分の賃金を控除するといった運用は認められます。
いざ育児時短勤務制度を利用する従業員が出た際に慌てないよう、申出の方法だけでなく、賃金控除の方法についても、賃金規程や育児・介護休業規程に規定しておくことが望ましいでしょう。
Q1. 短時間勤務をしている従業員に支払う手当を減額することは可能でしょうか?
勤務時間に応じて支払う賃金については、短縮した労働時間分の控除が可能であると考えられますが、手当については、「何に対して支払う手当か」という点が重要になります。
たとえば、精勤手当や皆勤手当などは、企業が決めた出勤成績を満たした場合に支給されるものであるため、勤務時間の短縮に応じて減額したとしても特段の違和感はありません。
一方で、家族手当や住宅手当など、本人の働きぶりとは直接関係なく支給される手当については、所定労働時間を短縮したことのみを理由として減額するのは、やや無理があると考えられます。
また、役職手当や職務手当についても、勤務時間が短くなっただけで職務内容や職責に変更がない場合には、減額する合理的な理由はないものと考えられます。
Q2. 短時間勤務を理由として、賞与を減額することは可能でしょうか?
賃金と同様に、賞与についても、短縮した時間に対応する部分については、減額しても問題ないものと考えられます。
ただし、個人の売上や成果に基づいて賞与を支給している場合には、勤務時間に比例して減額することに合理性があるとはいえないものと考えられます。
勤務時間に応じた賞与の減額は可能ですが、短時間勤務をしていることのみを理由として、賞与を大幅に減額したり、不支給としたりすることは、不利益な取扱いに該当するおそれがあります。
Q3. 短時間勤務をしている従業員が希望した場合、育児時間も取得させなければならないのでしょうか?
育児時間は、労働基準法第67条に規定されており、「生後満1年に達しない生児を育てる女性から請求があった場合には、休憩時間のほかに、1日2回それぞれ少なくとも30分の生児を育てるための時間を与えなければならない」とされています。
ただし、労働時間が4時間以内の場合には、1日1回30分の育児時間を与えれば良いこととされています。
短時間勤務制度を利用する場合であっても例外ではなく、1歳未満の子を育てる女性労働者から請求があった場合には、育児時間を与えなければなりません。
短時間勤務制度を利用して所定労働時間を6時間としている場合は、育児時間を利用して5時間勤務とすることも可能です。
なお、育児時間については、法律上、賃金の支払いは求められていないため、有給とするか無給とするかは会社が定めることができます。
今回は、育児のための短時間勤務制度について解説しました。
育児時短就業給付金の創設により、これまで以上に短時間勤務を希望する従業員は増加するものと考えられます。
一方で、これまでは希望者が少なかったことから、制度の運用や賃金・手当の取り扱いについて、
規定に十分な定めがない企業も少なくありません。
今後に備え、短時間勤務制度の内容や実務上の取扱いを改めて確認し、就業規則や関連規程を整備しておくことが重要です。
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