在宅勤務を禁止したい

更新日アイコン2026年06月09日

在宅勤務 テレワーク 禁止 出社命令

 最近、在宅勤務をしている従業員の勤務態度が気になる、、、。
レスポンスが遅い、進捗が見えない、指示が通らない、、、そんな状況が続くと、不信感を覚えるのは当然です。
では、会社は在宅勤務を禁止し、出社を命じることができるのでしょうか。 

在宅勤務の根拠と禁止

コロナ禍により、テレワークが浸透しました。テレワークとは、労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務のことを指します。今回はその中でも在宅勤務について取り扱います。

在宅勤務はなぜ可能なのか

在宅勤務は、法律により当然に認められた権利ではなく、労働契約において定めることによって初めて可能となる働き方です。
原則、労働者の就業場所は労働契約の範囲内で、会社が指示した場所になります。そのため、在宅勤務は就業場所に自宅や会社の指定する場所等の定めがあり、会社が指示した場合にのみ在宅勤務が可能になります。
しかし、コロナ禍でなし崩し的にテレワークに切り替わった背景や、メンタルヘルスを患った従業員や育児中の従業員への配慮から、在宅勤務が広く認められているため、在宅勤務は従業員の権利であると解釈されがちです。

出社命令

 在宅勤務を禁止する方法として出社命令があります。
出社命令は、①労働契約で定められた就業場所と、②使用者の業務命令権に基づく正当な指示です。 

①労働契約で定められた就業場所

前述のように労働者の就業場所は労働契約の範囲内で、会社が指示した場所になります。労働条件通知書等で就業場所が「本社」や「営業所」となっている場合には、従業員はその場所で労働力を提供することが原則です。

②使用者の業務命令権

判例上、会社は従業員に「業務の内容」、「業務の方法」、「就業場所」などを指示する業務命令権を持つとされています。
ただし、すべての出社命令が当然に有効となるわけではなく、

・業務上の必要性がない

・不当な動機、目的がある

・当該労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである等の

特段の事情がある場合には、権利濫用として無効となる場合があります。

在宅勤務禁止が認められなかった判例(出社命令否定)

アイ・ディ・エイチ事件

従業員が、違法な出社命令で労務の提供ができなかったと未払い賃金の支払い等を求めた事件です。
該当の従業員が会社で使用しているパソコンのメッセージ機能を使用し、他の従業員と会社の誹謗中傷をする会話をおこなったため、会社は在宅勤務を禁止し、出社するよう命じました。

・労働契約書の就業場所は「本社事務所」と記載されていたが、従業員が事務所に出社したのは初日のほか一度だけ
・会社の代表者自身から「デザイナーは自宅で勤務しても問題ない」、「リモートワークが基本であるが、何かあったときに出社できることが条件」との発言があったことから、
業務上の必要がある場合に出社勤務を命ずることができるとしました。

しかしながら、メッセージ機能を用いた会話が長時間であったとは認められないなどとして、業務上の必要性を否定し、出社命令は認められませんでした。

そして、従業員が労務を提供をしていないのは会社の責めに帰すべき事由によるもの(会社が出社を命じることができないないにもかかわらず、命じたため)であるとして、裁判所は会社に従業員へ賃金を支払うよう命じました。

在宅勤務禁止が認められた判例

トヨテック事件

休職していた従業員の復職に10カ月かかり、従業員が復職は可能であったと未払い賃金の支払いを求めた事件です。
従業員は在宅であれば勤務ができたにもかかわらず、会社が在宅勤務を認めなかったと主張しました。

・会社が在宅勤務の要件を「自己管理、時間管理ができる者」「上司が認めた在宅勤務可能な 業務が実施できる者」と明文化していた
・日ごろから勤務態度に問題があり、会社の在宅勤務規程の要件(自己管理能力や業務遂行能力 等)を満たさない従業員であったことから、在宅勤務による復職を認める義務はないと判断されました。

今回のケース

勤務態度の程度にも寄りますが、在宅勤務の要件や禁止する場合のルールがあれば業務上の必要性があるとして、在宅勤務を禁止できる可能性があります。

まずは、勤務態度についてきちんと指導し、改善を促しましょう。改善が見られれば、在宅勤務を禁止する必要もありません。改善が見られない場合も想定し、指導の際は、証拠として記録を残しておくことが重要です。
ただし、在宅勤務に関するルールがあったとしても、これまで一度も出社したことがない場合、就業場所が自宅のみとなっている場合、在宅勤務を前提として労働契約を締結していた場合には、在宅勤務を禁止できない可能性もあります。

在宅勤務制度設計のポイント

在宅勤務を導入する際には、会社主導の制度とすることが大切です。
働きやすさとコントロールのしやすさが両立する制度としましょう。

①在宅勤務は会社の許可制
原則出社とすることとし、在宅勤務は許可制で行う設計が望ましいです。在宅勤務は権利ではなく、例外的な働き方として位置づけましょう。
許可制とすることで、業務内容や勤務態度、勤務成績などを踏まえて、柔軟に判断できます。

②在宅勤務の申請・承認フロー
在宅勤務は、従業員の申請に基づき、上長の承認および人事の確認を経て許可するなど申請方法についても検討しておきましょう。 緊急時(災害・感染症)と通常時で運用を分けることも可能です。

③在宅勤務の許可基準
・対象となる職種、業務
在宅勤務により、業務が限定される場合があります。出社している従業員に過度に負担がかからないよう注意が必要です。また、出社が必要な業務がある場合には、在宅勤務を認めない設計にしましょう。

・勤務成績
在宅勤務の場合、勤務状況が見えずらくなります。これまでの勤務成績が悪化する場合には在宅勤務を認めない規定や、そもそもの勤務成績が悪い場合には、在宅勤務を認めないことも必要です。勤務成績の低下を防ぐため、在宅勤務時最低限の成果基準を設定すること、日報提出の義務付けも有効です。

・勤務態度
万が一に備え、これまでの勤務態度や在宅勤務での勤務状況を加味して、在宅勤務を許可するか判断できるような設計にしましょう。また、連絡の遅延や遅刻欠席早退を繰り返すなど勤務態度に問題が発生した場合には、在宅勤務を禁止できるようにしておくことも大切です。

④情報セキュリティ・労働時間管理
アクセスログを導入し、就業状況や進行状況を確認できるようにしておきましょう。また、必要に応じてVPNの導入やアクセス権限の制限をするなどセキュリティ対策を行いましょう。

こんなときどうする?

Q1. 在宅勤務導入にあたり、貸与しているパソコンと携帯にアクセスログソフトを入れることにしました。対象は在宅勤務が不可の職種も含む全従業員です。拒否している従業員がいるのですが、どうすればいいですか?

アクセスログの導入は、情報セキュリティ対策や労働時間管理のために必要な措置であり、会社の指揮命令権の範囲内です。
まずは従業員へ取得目的や範囲を丁寧に説明し、就業規則や誓約書に明記したうえで運用しましょう。
それでも従わない場合には、業務命令違反として段階的に注意・指導を行う対応が適切でしょう。

Q2.  出勤命令の要件の「業務上必要なとき」とは、どんなときですか?

「業務上必要なとき」とは、業務の遂行に出社が必要であると会社が合理的に判断できる場合を指します。
具体的には、対面での顧客対応、機密情報の取扱い、チームでの共同作業、新人教育、緊急対応など、在宅勤務では適切に対応できない業務が発生する場合です。
これらに該当する場合、会社は正当な業務命令として出勤を指示することが可能です。
ただし、会社には安全配慮義務があるため、職場環境や健康状態等に一定の配慮は必要です。


今回は、在宅勤務を禁止できるかについて解説しました。
多様な働き方が求められる一方で、制度を都合よく解釈してしまう従業員もいます。
まずは雇用契約の原理原則を理解し、
自身の義務を踏まえて権利を主張できるよう教育していくことが重要です。

アイプラスの労務管理研修では、“原理原則”を具体的事例に紐づけて整理しています。
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