これって自己都合?65歳直前の退職、どう判断する?

更新日アイコン2026年06月23日

65歳になる直前で退職したい

2025年4月の雇用安定法の改正により、希望するすべての労働者を65歳まで雇用する環境の整備が義務化されました。

これに伴い、定年年齢は60歳のままとしつつ、65歳まで嘱託社員や契約社員として有期雇用契約を更新する「継続雇用制度」を導入する企業が増加しています。

しかし一方で、「継続雇用している従業員から、65歳の誕生日直前に退職したいと申出があった場合、どのように対応すべきか」といったご相談が増えています。

今回は、こうしたご相談が増えている背景と、企業としての対応について解説します。

高年齢者雇用確保措置の概要

高年齢者雇用安定法第9条では、定年(65歳未満のものに限る)の定めをしている事業主に対し、その雇用する高年齢者について、65歳までの安定した雇用を確保するための措置(高年齢者雇用確保措置)を講じることが義務付けられています。

高年齢者雇用確保措置とは、次のいずれかを指します。

  • 定年の引き上げ

  • 継続雇用制度の導入
  • 定年の廃止

また、継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象として継続雇用することが求められます。

令和7年度の「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果によると、65歳までの雇用確保措置として、継続雇用制度を導入している企業は65.1%、定年の引き上げを行っている企業は31.0%となっています。

では、継続雇用制度とは、具体的にどのような制度なのでしょうか。

継続雇用期間と契約更新の考え方

継続雇用制度の種類(勤務延長と再雇用制度)

継続雇用制度は、大きく次の2つに分類されます。

  • 勤務延長制度
    定年を迎えた後も、同一の雇用契約のまま勤務を延長する制度です。
    雇用契約に変更がないため、勤務条件や給与形態についても、原則として大きな変更はありません。
    ただし、労使間の合意により、業務内容や給与を変更することは可能です。

  • 再雇用制度
    定年により一度退職扱いとしたうえで、新たに契約を締結し、雇用する制度です。
    嘱託社員や契約社員などの有期雇用とするケースが多く、勤務条件や給与形態についても見直しが行われます。

現状では、継続雇用制度としては、再雇用制度を導入している企業が多く見られます。

 

再雇用制度の契約期間と更新

定年後再雇用制度では、有期雇用契約とし、65歳までは1年ごとの契約を本人の希望に応じて更新していくことが一般的です。

企業側には65歳までの雇用確保義務があるため、契約を更新しない場合には、解雇に相当する合理的な理由が必要であるとされています。ただし、双方の合意がある場合には、契約を終了することも可能です。

「65歳直前で退職したい」が増えている背景

近年、「65歳の誕生日前に退職したいと言われた」といった相談が増えています。

企業には65歳までの雇用確保が義務付けられているため、嘱託社員や契約社員としての契約満了日を、満65歳の誕生日や誕生月の末日、満65歳に達した後の最初の3月31日と定めているケースが多いものと考えられます。

こうした中で、従業員から「契約満了前に退職したい」「誕生日の前々日を退職日としてほしい」といった申出が見られるようになっています。

その背景の一つとして、65歳未満で退職した場合と、65歳以上で退職した場合とで、雇用保険の給付内容が異なる点があると考えられます。

雇用保険の給付(基本手当と高年齢求職者給付金)

65歳未満で退職した場合には、雇用保険の給付として、基本手当(いわゆる失業保険)が支給されます。
一方、65歳以上の高年齢被保険者が離職した場合には、基本手当でなく、一時金として高年齢求職者給付金が支給されます。

どちらも雇用保険の給付ですが、支給方法や支給日数などに違いがあります。

  基本手当 高年齢求職者給付金
対象者 原則:65歳未満で離職した被保険者 原則:65歳以上で離職した被保険者
必要な被保険者期間 原則:離職日前2年間に12か月以上 離職日前1年間に6か月以上
支給方法 分割支給
(所定給付日数を上限に、失業している日について支給される)
一時金
(被保険者期間に応じて給付日数が決まる)

支給額の考え方 基本手当日額×支給日数 基本手当日額×給付日数
基本手当日額の計算方法 離職日前の最後の6か月に支払われた賃金の合計÷180×給付率
給付率 賃金日額に応じて決定される(賃金日額が高い人ほど給付率が低くなる)
  • 離職日に60歳未満の場合
    50 % ~80%

  • 離職日に60歳以上65歳未満の場合
    45%~80%

50%~80%
所定給付日数/給付日数 離職日における年齢、算定対象期間、
離職理由などによって定められている
被保険者期間に応じて定められている
自己都合退職・定年退職の場合
  • 算定対象期間が10年未満:90日
  • 10年以上20年未満:120日
  • 20年以上:150日
  • 1年未満:30日
  • 1年以上:50日

これらの雇用保険の給付の違いにより、「基本手当を受給するほうがお得」と感じられることから、「65歳直前で退職したい」という申出が増えているものと考えられます。

なお、民法上は65歳に達するのは誕生日の前日とされているため、「誕生日の前々日に退職したい」という、一見すると不可解に思える申出がなされることになります。

「65歳直前で退職したい」場合の離職理由の考え方

契約期間が残っているにもかかわらず、満65歳の誕生日の直前に退職したいとの申出があった場合、離職票に記載する離職理由の取扱いについては、どれに該当するか迷うケースが多いようです。

  • 2「定年による離職」

  • 3の(1)「採用又は定年後の再雇用時等にあらかじめ定められた雇用期限到来による離職」

  • 5の(2)「労働者の個人的な事情による離職」

2「定年による離職」

あらかじめ定められた定年を迎えて離職する場合に選択するものです。
定年年齢に達した際に、勤務延長制度や再雇用制度を利用しない場合は、「定年による離職」となります。

定年後再雇用制度では、新たに有期雇用契約を締結しているため、契約期間の満了による離職は「定年」には該当しません。

3の(1)「採用又は定年後の再雇用時等にあらかじめ定められた雇用期限到来による離職」

定年後再雇用制度により新たな有期雇用契約を締結し、その契約期間の満了によって離職する場合に選択するものです。

契約満了日を満65歳の誕生日としている場合には、その日が契約満了日となるため、「満65歳の誕生日の前々日に退職したい」との申出があった場合、契約満了による離職には該当しません。

また、契約期間を「満65歳の誕生月の末日まで」や「満65歳を迎えた後の最初の3月31日まで」としている場合も、同様の取扱いとなります。

5の(2)「労働者の個人的な事情による離職」

いわゆる自己都合退職の際に選択するものです。

「65歳になる直前で退職したい」という申出の場合は、「定年による離職」にも「雇用期限到来による離職」にも該当せず、従業員からの申出による離職となるため、原則、自己都合退職として扱うことになります。

会社としてどう対応するか

65歳になる直前での退職については、契約期間の途中で離職することとなるため、原則として自己都合退職として取り扱われます。

そのため、従業員から「雇用期限の到来による離職として処理してほしい」と言われ、そのまま対応してしまうと、実態と合わず、ハローワークにおいて離職理由が修正される可能性があります。

また、雇用期限の到来として離職証明書を提出する場合には、契約内容の確認のため、雇用契約書の提出を求められることもあります。結果として、説明や対応の手間が増えてしまうケースも少なくありません。

こうした点を踏まえると、基本的には原則どおりの取扱いとし、離職の実態に沿った手続きを行うことが、実務上のトラブル防止につながります。


今回は、65歳直前で退職したいとの申出が増えている背景と、離職理由の考え方について解説しました。

65歳未満で退職した場合と65歳以上で退職した場合とでは、受けられる雇用保険の給付が異なることから、
「65歳になる前に退職したほうがお得」と感じる従業員が一定数いるものと考えられます。

再雇用時の契約期間の設定や、契約満了前に退職を希望された場合の取扱いについては、
制度の趣旨や実務を踏まえ、あらかじめ社内で整理しておくことが重要です。

判断に迷う場合には、労働法の専門家である社労士にご相談ください。


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