同一労働同一賃金ガイドラインの改正

更新日アイコン2026年08月25日

同一労働同一賃金

 パートタイム・有期雇用労働法の改正により、2020年4月から、正社員とパートタイム・有期雇用労働者および派遣労働者との間に不合理な待遇差を設けることが禁止されています。

また、2021年4月からは中小企業にも同法が適用されました。「同一労働同一賃金」という言葉は広く浸透しているものの、どのような待遇差が「不合理」と判断されるのかについては、依然として分かりにくい点も多く、対応に悩む企業も少なくありません。

2026年10月には、パートタイム・有期雇用労働法施行規則および同一労働同一賃金ガイドラインの改正により、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変更されます。

本記事では、同一労働同一賃金の考え方を整理するとともに、改正内容について解説します。

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金の目的

同一労働同一賃金は、同一企業・団体における、いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものとされています。

不合理な待遇差を解消することで、どのような雇用形態を選択しても納得感のある処遇を受けられ、多様な働き方を選択できるようにすることも目的の一つとされています。

基本的な考え方

同じ企業で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。

雇用形態の違いにかかわらず、同じ仕事であれば同じ待遇(均等待遇)、仕事が異なればその違いに応じた待遇(均衡待遇)が求められます。

待遇は、①職務内容(業務の内容と責任の程度)、②職務内容・配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)、③その他の事情の違い(職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行など)に応じたものとする必要があります。

均等待遇=差別的取扱いの禁止
上記の①および②が同じ場合は、雇用形態にかかわらず同じ待遇とする必要があります。

均衡待遇=不合理な待遇差の禁止
上記の①から③の違いに応じて、正社員等とバランスの取れた待遇とすることが必要です。

派遣労働者については、派遣元事業主に対し、派遣先均等・均衡方式(派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇)または労使協定方式(一定の要件を満たす労使協定による待遇)のいずれかにより、待遇を確保することが求められています。

同一労働同一賃金ガイドラインとは

同一労働同一賃金ガイドラインは、不合理な待遇差に該当するものや、その判断に当たっての考え方、具体例などを示したものです。

例えば、労働者の業績または成果に応じて支給する基本給については、以下のように記載されています。

  • 通常の労働者と同一の業績または成果を有する短時間・有期雇用労働者には、業績または成果に応じた部分につき、通常の労働者と同一の基本給を支給しなければならない。

  • 業績または成果に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。
  • 基本給とは別に、労働者の業績または成果に応じた手当を支給する場合も同様である。

具体例として、以下のような事例が挙げられています。

  • 基本給の一部について、労働者の業績または成果に応じて支給する場合
問題とならない例 所定労働時間が通常の労働者の半分の労働者が、通常の労働者に設定されている販売目標の半分を達成した場合に、通常の労働者が販売目標を達成した場合の半分を支給する
問題となる例 短時間労働者に対しても通常の労働者と同一の販売目標を設定し、それを達成しない場合には支給しない

問題とならない例として挙げられている事例は、労働時間の違いに応じて待遇差を設けているものであり、均衡待遇の考え方を示したものです。

ガイドライン改正で何が変わるのか

今回のガイドライン改正では、裁判例を踏まえ、各種手当や福利厚生などの待遇に関する原則となる考え方や具体例が追加されました。

項目 追加された内容
賞与 賞与・退職手当の目的には、労務の対価の後払い、功労報償等のさまざまな目的が含まれます。
これらの目的が妥当するにもかかわらず、短時間・有期雇用労働者に対し、通常の労働者との職務の内容の違いに応じた均衡のとれた内容の賞与・退職手当を支給しない場合、不合理と認められる可能性があります。
退職手当
無事故手当 通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の無事故手当を支給しなければなりません。
家族手当 労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければなりません。
住宅手当 住宅手当が「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」である場合、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければなりません。
福利厚生施設 福利厚生施設の料金・割引率等の利用条件について、不合理と認められる待遇差を設けてはいけません。
病気休職・休暇 通常の労働者に病気休職期間に係る給与の保障を行う場合には、労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の給与の保障を行わなければなりません。
夏季・冬季休暇 短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季・冬季休暇を付与しなければなりません。
褒賞

褒賞が「一定の期間継続勤務した労働者に付与するもの」である場合、通常の労働者と同一の期間勤務した短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の褒賞を付与しなければなりません。

賞与や退職金、その他の手当についても、支給目的を明確にし、均衡待遇が確保されているかを確認することが重要です。

有期雇用労働者への明示事項の追加

パートタイム・有期雇用労働法施行規則の改正により、雇い入れ時の労働条件明示事項として、現行の明示事項に加え、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができるの明示が必要となります。

労働条件通知書や雇用契約書の改訂が必要となるため、注意が必要です。

こんなときどうする?

Q1. 週3日勤務のパート社員にも、夏季休暇や冬季休暇を与える必要はありますか?

ガイドラインでは「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない。」とされています。問題となる例として、「A社において、繁忙期に限定された短期間の勤務ではない有期雇用労働者であるXに対し、通常の労働者と同一の夏季・冬季休暇を付与していない」場合が挙げられています。

これは、日本郵便(佐賀)事件の最高裁判決を踏まえて追記されたものです。

日本郵便(佐賀)事件では、正社員は夏季および冬季にそれぞれ3日ずつの特別休暇を取得できるのに対し、時給制の契約社員にはこれらの休暇が付与されていないという待遇差は不合理なものであると認められました。

  • 休暇の目的が、年次有給休暇や病気休暇等とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図るものであると解されること
  • 夏季・冬季休暇の取得の可否や取得可能日数が、正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものではないこと
  • 時給制契約社員は、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑にかかわらない勤務が見込まれること

などを踏まえ、夏季・冬季休暇を付与する趣旨は契約社員にも妥当するとされました。

さらに、これらの趣旨を踏まえると、正社員と契約社員の間に、職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲、その他の事情について相応の相違があることなどを考慮しても、夏季・冬季休暇に係る労働条件の相違があることは不合理であると評価できると判断されています。

これらを踏まえると、休暇を付与する目的によっては、週3勤務のパート社員にも夏季休暇や冬季休暇を与える必要があるものと考えられます

ガイドラインでは均衡待遇に関する記載がないため、所定勤務日数や所定労働時間に応じた差異がどこまで認められるのかについては、今後の行政解釈やQ&Aを確認する必要があります。

Q2.  正社員に昼食代の補助として食事補助チケットを配布しています。パート社員にも配布する必要はありますか?

ガイドラインでは、労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に対する食費の負担補助として支給される食事手当について、「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の食事手当を支給しなければならない。」とされています。

問題とならない例として、労働時間の途中に昼食のための休憩時間がない短時間労働者に食事補助を支給しない場合が、
問題となる例として、通常の労働者には有期雇用労働者より高額の食事手当を支給している場合が挙げられています。

そのため、昼食代の補助を目的として食事補助チケットを配布しているのであれば、正社員には食事補助チケットを配布する一方で、午前中に出勤し、昼休憩を挟んで午後も勤務するパート社員には配布しないという運用は、不合理な待遇差と判断される可能性が高いものと考えられます

なお、正社員は週5日勤務であるのに対し、パート社員は週3日勤務という場合には、出勤日数によって補助額に差をつけるという運用は問題ないと考えられます。


今回は、同一労働同一賃金について解説しました。

雇用形態にかかわらず、同じ仕事なら同じ待遇、仕事が異なれば違いに応じた待遇とすることが基本的な考え方となります。

また、有期雇用労働者を雇い入れた際には、「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」を明示する必要があります。
実際に説明を求められた場合には、企業は待遇差の内容やその理由を説明しなければなりません。

ガイドラインの改正に合わせて、手当や休暇をどのような目的で付与しているのかを棚卸しすることお勧めします。

判断に迷う場合には、労働法の専門家である社労士にご相談ください。


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