懇親会とトラブル

更新日アイコン2026年 04月14日 

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この時期になると、「懇親会は労働時間にあたるか?」といった労働時間の取り扱いや、
「懇親会でハラスメント事案が発生した」「懇親会帰りにケガをした」
というような羽目を外してしまった従業員への対応の相談が増加します。

今回は、懇親会シーズンによくある相談を原理原則を踏まえて解説します。

懇親会×労働時間

Q1 従業員より「明日の業務後の懇親会は、労働時間にあたるのか?」と相談がありました。
社員交流のため全員参加としていますが、業務ではないため「労働時間ではない」と回答しました。大丈夫でしょうか?

 

  • 労働時間とは、使用者の明示または黙示の指示によって、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。

    一般的に懇親会は業務にはあたりませんが、使用者の指揮命令下に置かれていたと判断できる場合には、労働時間にあたる場合があります。労働時間にあたるかはその懇親会の実態をみて判断することになります。

  • 懇親会が労働時間に該当するかどうかについては、判例で下記の基準が示されています。
    尚、この基準はどちらか一方だけではなく、どちらも満たした場合に労働時間に該当すると考えられています。

    • 参加が強制であったか?
      強制参加と案内している場合はもちろん、事実上参加を余儀なくされていた場合を含みます。
      例えば、任意参加としているものの、実態は表彰や業績発表等を行っており慣例的に全員参加となっている場合や、正当な理由がないと欠席が認められない場合や欠席した際に賃金が減額される場合、人事評価でマイナスの影響を受ける場合には、労働時間に該当する可能性が高いと考えられます。

    • 事業運営上緊要なものと認められ、かつ事業主の積極的特命によってなされたか
      噛み砕くと、①事業運営上、非常に重要で、②事業主から積極的かつ特別な命令があって懇親会が実施された場合には、労働時間とみなされる可能性が高くなります。
      例えば、事業主から特命を受けて従業員がゴルフコンペの運営をする時間や、
      事業主から特命を受けて懇親会の準備をする時間は、労働時間に該当する可能性が高いです。

      会社が費用を出しているのだから、業務ではないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、
      判例では、「出席費用が、事業主より、出張旅費として支払われる等の事情があるのみではたりず」と会社が懇親会費用を負担したのみでは、その懇親会が労働時間に該当するかどうかは判断できないとしています。

  • 今回のケースでは、全員参加と案内しており、「参加が強制されている」ことがうかがえます。しかし、社員交流という理由のみでは、「事業運営上緊要なものと認められ、かつ事業主の積極的特命によつてなされた」とは言えないため労働時間にあたらない可能性が高いと考えます。

    懇親会を開催する際には業務時間内に行うなど、「参加させられた」と感じる従業員の心情に配慮することも必要です。同時に、交流目的の懇親会に疑念を持つ従業員は、自社に合っているか?についても再検討してみましょう。また、飲みニケーションに頼らない関係の築き方についても教育していくことが重要です。

 

懇親会×懲戒処分

Q2 先日懇親会を行ったところ、「上司からパワーハラスメントを受けた。懇親会の二次会の不参加を伝えたところ、参加しないと評価が下がると言われたので、仕方なく二次会に参加した。」と報告がありました。パワーハラスメントを行った従業員の懲戒処分を検討していますが、処分は可能でしょうか?

 

  • 職場におけるパワーハラスメントとは、下記3つを満たすことを言います。

    尚、「職場」には、勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中等であっても、実質上職務の延⻑と考えられるものも含まれます。ただし、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して個別に⾏う必要があります。

    ①優越な関係を背景とした言動
    ②業務上、必要かつ相当な範囲を超えた言動により
    ③就業環境を害すること(身体的または精神的な苦痛を与えること)

    嫌だと思ったらパワーハラスメントだ」と思われがちですが、
    観的にみて、業務上必要な範囲で行われる適正な指示や指導はパワーハラスメントにはなりません。

  • パワーハラスメントで懲戒処分可能か?
    パワーハラスメントは、職場の秩序を乱す行為であり、厳格な対応が求められるでしょう。しかしすべてのパワーハラスメントが懲戒処分できるわけではありません。パワーハラスメントはいくつかの段階にわけることができます。
     


    レベル

    内容

    犯罪行為レベル(刑法)

    •  「殴る」、「蹴る」などの暴行・傷害
    •  「死ね」や「やる」などの脅迫・名誉棄損・侮辱   

    不法行為レベル
    (民法)

    • 嫌がらせ等の目的による強い叱責に起因して精神障害を発症させたなど
    • 暴言や粗暴な態度等を繰り返すことに起因して精神障害を発症させたなど

    職場環境レベル

    • 業務上の必要性がない、必要性があっても不適切な内容や量の仕事を与えるなど
    • からかう、無視をする、執拗に指摘するなど

     

    犯罪行為レベルや不法行為レベルであれば、当然に懲戒処分可能と考えますが、職場環境レベルでは、懲戒処分できない場合や重すぎる懲戒処分としてさらなるトラブルに発展する場合もあり、慎重に検討する必要があります。また、就業規則等に規定がない場合、懲戒処分できない可能性もあります。

  • 今回のケースの場合、ただ単に二次会に参加を促す程度であればパワーハラスメントとは言えませんが、「評価を下げる」といった発言や「終業後も拘束する」ことはパワーハラスメントとみなされる可能性が高いです。しかし、一度きりの職場環境レベル程度の言動と考えられ、懲戒処分は難しいでしょう。
    また、上司から「評価が下がる」と発言があったとしても、一般的に考えれば 二次会の参加率で人事評価が下げられることがないことは、明らかでしょう。まずは、厳重注意にとどめ、記録を残しましょう。
    ※なお、繰り返しますが、就業規則に規定がなければ懲戒処分はできないため注意が必要です。

    ハラスメントの発生防止には、管理職のハラスメント教育はもちろん、非管理職の受け取り方の訓練が必要でしょう。また、ハラスメントに限らず従業員の問題行動を発見した際には、就業規則を見直すなどルール整備をしましょう。

懇親会×労災

 Q3 従業員より「昨夜の懇親会の帰り道に、転んでケガをしたのだが労災になるか?」と相談がありました。昨夜の懇親会は業務時間中に行っていましたが、飲酒を伴うものでしたが労災になるのでしょうか?

  • 労働災害とは業務が原因で、労働者が負傷する、病気にかかる、死亡することをいいます 。
    また、労働災害も「業務災害(業務が原因で被った傷病等)」と「通勤災害(通勤によって被った傷病等)」に分けられます。今回のケースの場合では、該当するならば、「通勤災害」になるでしょう。

  • 傷病等が「通勤災害」に該当するかは、その移動が通勤であるかどうかで判断されることになります。
     「通勤」とは、就業に関し、㋐住居と就業の場所との間の往復㋑就業の場所から他の就業の場所への移動㋒単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路および方法で行うことをいい、業務の性質を有するものを除くとされています。
    ただし、通勤中に移動の経路を逸脱または中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の移動は「通勤」とはなりません
     


  • 懇親会後の移動は労働災害(通勤災害)にあたるかについては、その移動が通勤経路を逸脱または中断後の移動に該当するかを個別的にみて判断します。つまり、その懇親会に業務との関連性があるかどうかです。業務との関連性があるかについては、労働時間同様に、①参加が強制であったか? 、②事業運営上緊要なものと認められ、かつ事業主の積極的特命によつてなされたかをみて判断します。
    ただし、労働時間(労働基準法)と、労働災害(労働者災害補償保険法)は根拠となる法律が異なるため、労働基準法上の労働時間と認められない場合でも、労働者災害補償保険法上では労働時間性が認められ災害補償が適用される場合があります。

  • 今回のケースでは、業務時間中に懇親会が行われているため、業務との関連性が高いといえ、その後の懇親会会場から自宅までの移動は通勤とみなされ、通勤災害として認められる可能性が高いでしょう。ただし、過度な飲酒があった場合や二次会に参加した場合には認められにくいでしょう。
    そもそも、労働災害の認定は労働基準監督署で行うものであるため、労働災害に該当するかどうか会社が判断するものでありません。安易に自社で回答することは控えることをおすすめします。

    労働災害は日ごろの気の緩みが原因で発生することがほとんどです。転倒してケガをした程度の労働災害でも頻繁に発生している場合には、注意が必要です。どんな労働災害であろうと、発生した際には、気を引き締めるため研修を行うなど教育をしていきましょう。

懇親会は、何気ないやり取りが思わぬトラブルに発展することもある場面です。
懇親会そのものがトラブルの原因なのではなく、
自社にある課題や認識不足が、懇親会の場で表面化しやすいという点に注意が必要です。
だからこそ企業には、日頃から継続的に指導・教育を行い、
問題を未然に防ぐ体制を整えておくことが求められます。

アイプラスでは、労務管理の基礎力向上研修やパワハラと言われない指導法研修などの各種研修や
就業規則の作成や見直しはもちろん、
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