2025年 8月26日

これまでご紹介した変形労働時間制は、労働時間を法定内であれば労働時間を柔軟に設定できる制度でした。最終回の今回は労働者が1日の労働時間や始業・終業時刻を決めることが可能なフレックスタイム制を紹介します。働き方改革の一環として、それまで1か月以内とされていたフレックスタイム制の清算期間の上限が、3か月に延長されるなど、より柔軟な働き方ができるようになりました。
フレックスタイム制は労使協定で総労働時間を定め、労働者が1日の労働時間や始業・終業時刻を決めることができる制度です。フレックスタイム制導入の際には、労使協定の締結と就業規則への必要事項の記載が必須となります。
| 月 |
法定労働時間の総枠 |
| 4月 (214.2時間上限) |
160時間 |
| 5月 (221.4時間上限) |
210時間 |
| 6月 (214.2時間上限) |
140時間 |
| 合計 | 510時間 |
Q1 フレックスタイム制において、割増賃金の支払いが必要な場合を教えてください。
フレックスタイム制において、割増賃金の支払いが必要な場合は下記のとおりです。
原則:労働時間が清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えた場合
清算期間が1か月以上の場合:労働時間が1か月ごとに、週平均50時間を超えた場合
Q2 フレックスタイム制対象の社員が、清算期間に法定労働時間の総枠を超えて、10時間多く労働しました。翌清算期間の労働時間の総枠を10時間短く設定すれば、割増賃金は払わなくてもいいですか?
賃金全額払いの原則に反するため、割増賃金の支払いが必要となります。
一方、労働した時間が清算期間内の労働時間の総枠より少なかった場合は、その不足した時間を翌清算期間に繰り越すことは可能です。
ただし、翌清算期間における実労働時間が法定労働時間の総枠を超える場合には、その超える部分については割増賃金の支払いが必要です。
Q3 清算期間が同じフレックスタイム制を導入している事業場に、フレックスタイム制対象の社員が異動しました。労働時間はどのように管理すればいいですか?
事業場ごとに労働時間を管理し、賃金の支払いを行いましょう。異動前後の事業場において、労働時間を合算することはできません。
フレックスタイム制を適用せず、それぞれの事業場で週平均40時間を越えた部分について、割増賃金の支払いをしましょう。
Q4 フレックスタイム制対象の社員に、18時からの会議に出席するよう伝えたところ「コアタイムじゃない。予定があるから嫌だ。」と断られました。会議に出席させられないのですか?
原則、コアタイム外での会議に出席させることは難しいでしょう。1日の労働時間、始業・終業時刻を労働者に委ねる制度ですので、コアタイムに会議を行うことになります。コアタイム外での会議でも同意を得られれば、会議の参加を依頼することは可能なため、日ごろからコミュニケーションをとり、その会議の重要性を理解してもらうことが重要でしょう。
全3回にわたり変形労働時間制とフレックスタイム制をご紹介しました。
適切な導入により、労働環境を改善し、結果的に社員満足度や生産性の向上が期待できます。
働き方改革により柔軟な働き方をさせることできるようになった一方、
使用者としては運用に悩む場面もあるのではないでしょうか。
不安や疑問がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
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